最高人民法院が植物新品種権者の懲罰的賠償請求を全額支持
『中国知識産権報』の報道によると、最高人民法院知識産権法廷はこのほど植物新品種に係わる権利侵害訴訟控訴審を結審し、その中で懲罰的賠償を適用し、上訴人(すなわち植物新品種権者)による300万元の賠償請求を全額支持した。
当該植物新品種の権利侵害訴訟控訴審は「丹玉405号」という植物新品種に係わり、係争植物新品種「丹玉405号」の育成者権者である遼寧のある種苗業公司(以下「A社」という)は、凌海のある種苗種公司業(以下「B社」という)がその授権又は許諾を受けずに、不法ルートを通じて係争植物新品種の親株を取得し、かつ商業目的で当該植物新品種を繁殖、生産、販売した疑いがあることを発見した。
これに先立ち、B社は2015年に植物新品種権「丹玉405号」を侵害したことにより、法院から侵害の即時停止と経済的損失50万元の賠償を命じる判決を受けたことがある。しかし、法院の判決にも関わらず、B社は引き続きトウモロコシの種子「丹玉405号」を生産し、「丹玉405号」を他の品種名で包装販売した。これにより、A社は、B社の行為は故意の権利侵害に該当し、かつ販売が複数の省・市にまたがっており、期間も長く、金額も大きいため、自社の合法的権益を著しく損なったと考えている。
第一審-山東省青島市中級人民法院
2021年7月、A社はB社等を山東省青島市中級人民法院に提訴し、権利侵害の即時停止、当該種子の破棄を求め、さらに賠償基数を150万元とした1倍の懲罰的賠償を適用することを主張し、計300万元を請求した。
審理の結果、第一審法院は、既存の証拠はB社がA社の許諾を得ずにトウモロコシの種子「丹玉405号」の生産、繁殖、販売を実施した権利侵害行為を立証するのに十分であると判断した。しかし、A社はその実際の損失又は権利侵害者の権利侵害による利益及び使用許諾料を証明する十分な証拠を提出しておらず、懲罰的賠償の基数の計算方式及び根拠を明確にして、懲罰的賠償の計算基数を確定することが出来ないため、法院は情状酌量してB社がA社の経済的損失及び合理的支出100万元を賠償すると決定した。
第二審-最高人民法院
一審判決が下された後、A社はこれを不服とし、最高人民法院に上訴した。
最高人民法院知識産権法廷は審理後、次のように認定した:
1)侵害の継続期間から分析すると、B社は2015年に係争植物新品種の育成者権侵害を構成したことがあり、その後、2019年及び2020年に係争植物新品種を偽装して生産、販売する侵害行為を継続した。
2)侵害のパターンと主観的な状態から分析すると、B社の偽装侵害行為は比較的強い隠蔽性があり、法律の制裁を逃れる故意が明らかである。
3)権利侵害の情状から分析すると、B社は不法に入手した原種で繁殖を行う行為だけでなく、偽装生産、他人への無許可繁殖の委託、権利侵害行為の重複もあった。
4)事件に係わる金額から分析すると、B社は2019年に「丹玉405号」の原種2000斤(斤は重さの単位、1斤=0.5kg)を違法に使用して400ムー(ムーは面積の単位、1ムー=1/15ヘクタール)を繁殖させたと自認しており、これにより400ムーで計約180トンの「丹玉405号」のトウモロコシ種子を収穫できると推算できる;「丹玉405号」のトウモロコシ種子の売上粗利益が8.28元/kgであることを参考に計算すると、A社が主張する150万元の賠償基数をほぼ満たしている。
以上から、B社の権利侵害行為は時間が長く、地域が広く、規模が大きく、複数回にわたって権利侵害行為を実施しており、情状が深刻である。このため、最高人民法院知識産権法廷は、この事件で明らかになった権利侵害事実に基づき、150万元の賠償基数及び1倍の懲罰的賠償倍数に基づいて計算し、第二審はA社の賠償請求額300万元の全額を支持するように判決を変更した。
我が国の知的財産権保護体系において懲罰的賠償制度が確立されており、「中華人民共和国種子法」第72条では、植物新品種権侵害の賠償金額をどのように確定するかが明確にされており、さらに「懲罰的賠償」は賠償基数の1倍以上5倍以下であってもよいことが明確にされている。また、『中華人民共和国著作権法』、『中華人民共和国商標法』、『中華人民共和国専利法』等の知的財産権関連法においても、権利者が法により享有する知的財産権を故意に侵害し、かつ情状が重大である場合、原告は被告に懲罰的賠償責任を負うよう判決命令を請求することができると明確にされている。
しかし、実践には、懲罰的賠償の基数及び賠償倍数をどのように確定するかは難しく、本件の判決は懲罰的賠償制度の適用に積極的な指針を示しており、本件の第二審の判決で示されたように、「懲罰的賠償は確定した賠償基数を前提とする必要があるが、賠償基数の計算精度については過度に厳しい要求をすべきではなく、現有の証拠及び事件の状況に基づいて合理的な賠償基数を確定することができる。即ち、賠償基数の計算に必要な一部のデータに確かな証拠の裏付けがあることを基礎として、事件状況に基づいて裁量権を運用して計算に必要なその他のデータを確定し、公平で合理的な賠償基数を適宜決定することができる」。
(上海専利化学医薬生物事業部 李政璋より原稿提供)
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